【乾く】
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「物事にはなにかしら、潤滑油のようなものが必要なわけだ。まぁ、特に乾いたこの世は。な?」
ウィスキーの入ったグラスを片手に、隣席の男がそう言った。
「そんなもんですかねぇ。」
最近焼酎をはじめた二十歳過ぎのオレには、隣に座っている40代ぐらいのオヤジが言うことはあまり飲み込めない。
これが『年の功』というものだろうか。
「キミは『世の中の乾き』には鈍感なようだね。」
「『乾き』…ですか。」
「そうさ。とかく会社人間は歯車と形容されがちだが、油を点さなければ歯車は動かない。サポートする者、つまり油がいなければ世間は動かないってことだ。」
「それとオレと、どういう関係が?」
オレは隣席のオヤジに訊ねた。
「キミはまだ若い。だからどんな水にも慣れるだろう。でも、水は油と対立する。油は対立するからこそ、存在する意味があるんだ。」
「…あの。よく意味がわからないのですが?」
そう言ったオレに、そのオヤジは笑って答えた。
「バカだなぁ。水に慣れる。つまり、世間に流されるようじゃダメなんだよ。たまには対立する度胸も持て。ってことだよ。」
カウンターに5000円を置いてオヤジは店を出て行った。
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